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藤井浩(助教授) 分子研リポート2000 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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184 研究系及び研究施設の現状

藤 井   浩(助教授)

A -1)専門領域:生物無機化学、物理化学

A -2)研究課題:

a) 酸化反応に関与する金属酵素反応中間体モデルの合成 b) 磁気共鳴法による金属酵素の小分子活性化機構の研究 c) ヘムオキシゲナーゼの酸素活性化機構の研究

d) アミノ酸の位置特異的ミューテーションによる酵素機能変換

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 生体内には、活性中心に金属イオンをもつ金属酵素と呼ばれる一群のタンパク質が存在する。これらの中で酸化反 応に関与する金属酵素は、その反応中に高酸化状態の反応中間体を生成する。この高酸化状態の反応中間体は、酵素 反応を制御するキーとなる中間体であるが、不安定なため、詳細が明らかでないものが多い。高酸化状態の反応中間 体 の電 子構造 と反 応 性を 解 明するた め 、そ の モデ ル錯体 の合 成 を行 った 。配位 子 に独 自の ア イデア を加 える こ

と、–80 度以下の低温で反応を行うことにより、ペルオキシダーゼやチトクローム酸化酵素反応中間体のモデルを

合成することができた。合成したモデル錯体と酵素反応中間体の吸収スペクトルを測定することにより、新たな酵 素反応機構を提案した。

b) 自然界にある窒素や酸素などの小分子は、金属酵素により活性化され、利用される。活性中心の金属イオンに配位し た小分子は、配位する金属イオンの種類、配位子、構造によりその反応性を大きく変化させる。小分子の反応性を支 配する電子構造因子がなにかを解明するため、磁気共鳴法により研究を行っている。金属イオンやそれに配位した 小分子を磁気共鳴法により直接観測して、電子構造と反応性の関わりを解明することを試みている。銅型亜硝酸還 元酵素の反応中間体である銅1価亜硝酸錯体を合成し、その活性化状態を63C u-、15N-NMR から研究した。その化学 シフトから、銅イオンから亜硝酸イオンへの電子の流れ込みが非常に強いことを見いだした。また、酵素がもつヒス チジン配位子の役割を解明するため、イミダゾール基をもつ酵素類似に錯体を合成し、63C u-NMR から電子的性質を 検討した。その結果、ピラゾールやピリジンに比べ、強く亜硝酸イオンを活性化する性質があることがわかった。 c) 金属酵素が作る反応場の特色と機能との関わりを解明するため、ヘムオキシゲナーゼを題材にして研究を行ってい

る。ヘムオキシゲナーゼは、肝臓、脾臓、脳などに多く存在し、ヘムを代謝する酵素である。肝臓、脾臓の本酵素は、胆 汁色素合成に関与し、脳に存在する本酵素は情報伝達に関与していると考えられている。本酵素の研究は、これら臓 器から単離される酵素量が少なく、その構造、反応など不明な点を多く残している。最近、本酵素は大腸菌により大 量発現することができるようになり、種々の物理化学的測定が可能になった。本研究では、大腸菌発現の可溶化酵素 と化学的に合成したヘム代謝中間体を用いて本酵素による酸素の活性化およびヘムの代謝機構の研究を行ってい る。酵素の活性中心近傍のアミノ酸残基をミューテーションすることにより、酸素活性化に関与するアミノ酸残基 を同定することができ、新しい酸素活性化機構を提案した。

d) 我々多くの動物は、生命エネルギー合成に酸素を利用しているが、酸素の乏しいところで生育する菌類やバクテリ アなどは窒素をエネルギー合成に利用している。これらの菌類やバクテリアは、酸素の代わりに硝酸イオンを電子 受容体として利用している。硝酸イオンは、菌体内のさまざまな金属酵素により亜硝酸イオン、一酸化窒素、亜酸化

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研究系及び研究施設の現状 185 窒素と還元されて、最終的に窒素になる。これらの菌類は、この反応過程で環境破壊につながる窒素酸化物を分解す るため、環境保全の面で最近大きな注目を集めている。我々は、これら一連の酵素の中で、亜硝酸還元酵素に焦点を あて研究を行っている。菌体から本酵素を単離する研究は古くから行われているが、不明な点が多い。本研究では、 本酵素の機能発現機構を解明する目的で、ミオグロビンという酸素貯蔵タンパク質をミューテーションにより亜硝 酸還元酵素へ機能変換することを行っている。

B -1) 学術論文

N. NISHIMURA, M. OOI, K. SHIMATZU, H. FUJII and K. UOSAKI, “Post-Assembly Insertion of Metal Ions into

Thiol-Derivatized Porphyrin Monolayers on Gold,” J. Electro. Chem. 473, 75 (1999).

K. FUKUI, H. FUJII, H. OHYA-NISHIGUCHI and H. KAMADA, “Electron Spin-Echo Envelope Modulation Spectral

properties of Amidate Nitrogen Coordinated to Oxovanadium(IV) Ion,” Chem. Lett. 198 (2000).

T. IKEUE, Y. OHGO, T. SAITOH, M. NAKAMURA, H. FUJII and M. YOKOYAMA, “Spin Distribution in Low-Spin

(meso-Tetraalkylporphyrinato)iron(III) Complexes with (dxz,dyz)4 (dxy)1 Configuration. Studies by 1H-NMR, 13C-NMR, and EPR Spectroscopies,” J. Am. Chem. Soc. 122, 4068 (2000).

H. ZHOU, C. T. MIGITA, M. SATO, D. SUN, X. ZHANG, M. IKEDA-SAITO, H. FUJII and T. YOSHIDA, “Participation

of Carboxylate Amino Acid Side Chain in Regiospecific Oxidation of Heme by Heme Oxygenase,” J. Am. Chem. Soc. 122, 8311 (2000).

B -3) 総説、著書

Y. WATANABE and H. FUJII, “Characterization of High-Valent Oxo-Metalloporphyrins” in Mtal-Oxo and Mtal-Peroxo Species in Catalytic Oxidations. B. Meunier, Ed., Structure & Bonding 97, Springer; Berlin 61 (2000)

B -4) 招待講演

藤井 浩 , 「63C u-NMR による非ヘム銅酵素の反応場と反応性の研究」, 分子研研究会「タンパク質の振動分光」, 分子研 , 岡崎 , 2000 年 6 月 .

藤井 浩, 「EPRによる金属ポルフィリンラジカルの磁気的相互作用の研究」, 分子研研究会「スピン化学の現状と展望― 高周波EPRの可能性―」, 分子研 , 岡崎 , 2000年 8月 .

藤井 浩 , 「生体内で働く金属酵素の構造と機能の関わり」, 錯体化学若手の会東海地区勉強会 , 名大 , 名古屋 , 2000年 11月 .

C ) 研究活動の課題と展望

これまで生体内の金属酵素の構造と機能の関わりを、酵素反応中間体の電子構造から研究したきた。金属酵素の機能をよ り深く理解するためには、反応中間体の電子状態だけでなく、それを取り囲むタンパク質の反応場の機能を解明することも重 要であると考える。これまでの基礎研究で取得した知見や手法を活用し、酵素タンパクのつくる反応場の特質と反応性の関 係を解明していきたいと考える。さらにこれらの研究成果を基礎に、遺伝子組み替えによるアミノ酸置換の手法を用いて、金 属酵素の機能変換および新規金属酵素の開発を行いたい。

参照

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